Ingressにおけるアーキタイプ(元型)の考察

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Ingressにおけるアーキタイプ(元型)の考察
最近、国家情報局のジェイ・フィリップスとケン・オーウェンがナイアンティック計画に関するメールのやりとりを行っているが、これは今までのストーリーの再整理としてよい資料であると思われる。その中で「アーキタイプ(元型)」という言葉が出てきた。
Itonaga Naohiro さん日本語訳 https://plus.google.com/+NaohiroItonaga/posts/ipUFurR1coJ
原文 http://investigate.ingress.com/2017/02/04/harmony-and-discord/

これについては、すでに Nauselin さんと MailEaterさんによる考察が出ている。
https://plus.google.com/+MailEater_White/posts/SHPzYC1XkEi

ここではさらに、原義的な意味から辿ってみよう。

ユングの元型論
アーキタイプという言葉に深い意味を与えたのはユングである。無意識の領域において人類が共有しているモチーフがアーキタイプであり、これが形を変えて夢や昔話などの中に現れてくるという。『元型論』に基づいて、有名なものを挙げると以下のようなものがある。(なお、ペルソナについては、ユングは元型に含めていないが、現在はこれもアーキタイプに含める場合がある)

・影(シャッテン/シャドウ):もしかしたらこうなる可能性もあったかもしれない自分
・アニマ:男性が無意識のうちに持っている女性原理、理想の女性像。
・アニムス:女性が無意識のうちに持っている男性原理、理想の男性像。
・太母(グレートマザー):母なる者を象徴する生命的原理。慈しみ育てるものでもあるが、対象を呑み込んでしまう可能性もある。
・老賢者(オールドワイズマン):人を教え、癒し、導くものとしてみられる理性的原理。時には狡猾さが現れることもある。
・始源児(ミラクルチャイルド):未来への可能性を秘めた子供。
・永遠の少年(プエル・アエテルヌス):精神的に決して成人しない存在。母なる無意識から独立できない。
・トリックスター:いたずら者。既存の価値観を壊し、新たな秩序をもたらす原因ともなる。

キャンベルの英雄伝説の基本構造
神話学者のジョーゼフ・キャンベルは『千の顔を持つ英雄』などで、世界の英雄伝説に共通するストーリー構造の元型を示した。また、「英雄」について神話学上で初めて規定したのも彼である。キャンベルの英雄伝説の構造論は、ジョージ・ルーカスがスターウォーズに導入したことでも有名だ。

キャンベルが発見した「英雄伝説の基本構造」をかんたんにまとめると以下のとおりである。

(1)セパレーション(分離・旅立ち)
 1:冒険への召命……使命が与えられる
 2:召命の辞退……一旦その使命を拒絶する
 3:超越的な援助……英雄を助けるものが現れる。
 4:最初の越境……英雄は「境界」を越え、異界へと入る。
 5:闇への航海……闇・魔の空間に突入する。

(2)イニシエーション(通過儀礼)
 1:試練の道……英雄になるための試練が続く。
 2:女神との遭遇……グレートマザーと出会う。
 3:誘惑する異性
 4:父との一体化……英雄の成熟。
 5:アナザー・ワールド……父が作った国を体験する。
 6:終局の恩恵……世界の全貌が明らかになる。

(3)リターン(帰還)
 1:帰還の拒絶……一旦、元の世界への帰還を拒む。
 2:呪的逃走……呪いを振り切って逃走する。
 3:外界からの救出……異世界からの帰還には助力が必要となる。
 4:帰路の境界……元の世界に戻るには、境界をうまく越えねばならない。
 5:二つの世界の導師……仮の姿をもって現れていた化身の正体が明かされる。
 6:自由と本性

キャロル・S・ピアソン
ユングとキャンベルを元にして、いくつかの元型論が語られている。その一つ、ピアソンの『英雄の旅』では12の元型が示されている。

幼子(イノセント)、孤児(オーファン)、戦士(ウォリアー)、援助者(ケアギヴァー)、探求者(シーカー)、破壊者(デストロイヤー)、求愛者(ラバー)、創造者(クリエーター)、統治者(ルーラー)、魔術師(マジシャン)、賢者(セージ)、道化(フール)

クリストファー・フォグラー
ストーリーアナリストのフォグラーは、神話の要素をシナリオの書き方として提示した。これもユングとキャンベルの発展型である。

まず、ストーリーの12ステージは以下のように示される。

ステージ1:日常の世界……読者・視聴者は日常世界で英雄に出会う。
ステージ2:冒険への誘い……英雄は冒険・挑戦・探究・解決すべき問題を知る。
ステージ3:冒険への拒絶……英雄は怖れ、召命をためらったり拒絶したりする。
ステージ4:賢者(メンター)……指導者が勇気・知恵・魔法の物品等を与え、英雄の過去の怖れや疑念を取り除く。
ステージ5:第一の境界の突破……英雄は最終的に挑戦を受入れ、異界への境界を越える。
ステージ6:試練、仲間、敵対者……英雄は試練、仲間、敵対者との出会いを通じて異界について学ぶ。
ステージ7:最奥の洞窟への接近……準備を整えて最奥の洞窟に向かう。
ステージ8:最大の試練(ordeal)……最も恐れていた死に直面するような最大の危機に耐える。
ステージ9:報酬……怖れや死に立ち向かったことに対する報酬を得る。
ステージ10:帰路……もとの世界への道筋をたどり、この旅を完成させることにする。
ステージ11:復活……元の世界との境界にて大きな試練に直面し、英雄は浄化・復活・トランスフォームされる。
ステージ12:宝を持っての帰還……英雄は元の世界へ宝(エリクサー)をもって帰る。
→こうして日常世界(ステージ1)へ戻って円環がつながる。

この中に登場するアーキタイプとして、フォグラーは7つの元型を示した。

1.英雄(ヒーロー)……奉仕し、犠牲となる者
2.賢者(メンター)……導く者
3.境界の守護者(スレショールド・ガーディアン)……試す者
4.使者(ヘラルド)……警告を与え、挑戦する者
5.形態変化者(シェイプシフター)……問いかけ、だます者
6.影(シャドウ)……破壊する者
7.トリックスター……混乱させる者

この7類型に加えて、従者を含めた8類型とする意見も出ているようである。

(フォグラーに関しては翻訳書が当てにならないため、 http://www.tlu.ee/~rajaleid/montaazh/Hero's%20Journey%20Arch.pdf こちらを参照して訳し直した)

Ingressにおけるアーキタイプとは?
そこで国家情報局による分析に戻るが、Ingress世界における「マグヌス」(結社、と言いかえてもいいだろう)を形成するために必須となる人格類型と定義されている。そこで挙げられた類型は、探検家、魔術師、託宣者、トリックスター、創設者、パトロン、権力者の7種である。ただし、前者4種と後者3種はやや趣が異なる。前者は物語における役割であり、後者は組織における役割だからだ。

古代ローマのウェスウィアン・マグヌスの場合、探検家=オブシディウス、同行した託宣者=巫女シビュラ、トリックスター=シュファクス、パトロンor権力者=ティトゥス、と当てはめることができる。これは13マグヌスでも、アンチマグヌスでも当てはまる構造であると推測されるが、すべてのアーキタイプがここで示されたわけではないと考えることもできる。ここに挙げられたのは7類型だが、ナイアンティック計画におけるABADNの棺は13人を必要としたからだ。

miu2d4r ミウツー さんの投稿のとおり、当初は10名しか判明しなかったが、
https://plus.google.com/113720436339222158827/posts/ZoJoYx6tpT7
その後、13人中12人(厳密には11人+1)がフラッシュシャードとして登場した。

○オリバー・リントン・ウルフ:スキャナーの開発者
○ユーリ・アラリック・ナガッサ:天文物理学者
○スタイン・ライトマン:グリフ研究者(光男)
○ローランド・ジャーヴィス:彫刻家
○ミスティ・ハンナ:マジシャン
○ヴィクター・クレーゼ:量子物理学者
○マーティン・シューベルト博士:物理学者(銀河宇宙線・太陽風)
○キャリー・キャンベル:記号学者
○エノク・ダルビー:作曲家
○エゼキエル・カルヴァン博士 黒幕
○ADA:A Detection Algorithm、人工知能
○デブラ・ボグダノヴィッチ:量子生物学者
○???あと一名不明
https://plus.google.com/+YikShengLeeIsrael/posts/f8oiW8M2VVB
(本投稿の画像はこの Yik Sheng Leeさんの投稿より)

ナイアンティック計画では「エンライテンドとレジスタンスに該当する人物の混在した調和に欠ける集団だった」のが従来と異なる点であると指摘されている。
ここで抜けている「探検家」枠として容易に思い浮かぶのがハンク・ジョンソンだが、13番目の棺には入っていないようだ。ただし、棺に入らなくてもナイアンティック計画の関係者であるから、14人目のアーキタイプと考えてもいいかもしれない。

ただし、アコライトやジャハーンはナイアンティック計画の参加者とは認められないため、ナイアンティック・アーキタイプの枠には含まれないだろう。ただし、その後のエンライテンド陣営、レジスタンス陣営それぞれにアーキタイプ的な人材が揃っていった可能性はあると思われる。

#Ingress H. Richard Loeb Hank Johnson Edgar Allan Wright
Masashi Kawashima Kento Suga
https://plus.google.com/photos/photo/101571290960297943734/6325658561997107890?icm=false&sqid=117368337781687210813&ssid=7cfa71b9-6f10-4043-8295-a8bd9ff3c760&hl=ja-JP

コメント

  1. リュケイオンHOで「3+5+5=13」という数字と、アーキタイプの話をした際、 後日明 氏より興味深い仮説が出ていました。
    曰く、全てに共通する基本アーキタイプが3種、残り各5種がそれぞれ Enlightened / Resistance に属する派生のアーキタイプなのではないか。それであればアーキタイプは陣営を限定すれば8種ということになります。

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