ヴェルム・インヴェニリ(Verum Inveniri)

Originally shared by Itonaga “Siel Dragon” Naohiro

ヴェルム・インヴェニリ(Verum Inveniri)
2016/11/07 22:00:56
ヴェルム・インヴェニリ・プロダクション第三部だ。伝説に曰くその針はフサルクのそばで蒼く輝くのだという。

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こうして二つの情報を得て、とうに色褪せた遙か以前の記憶と朧気につながりそうになった。調査のため図書館へ向かおうと、私はタクシーをつかまえた。後部座席へ滑り込んで傘を立て置くと、タクシーの運転手が「どこへ行くんだい」と問い掛けた。

座席をぽたぽたと濡らしながら私は「セントラル・ライブラリーまで頼む」と応えた。

「あいよ、こんな酷い夜に仕事ででかい本が必要なのかい?」と運転手の男は訊ねた。

私は長話を望んではおらず、「友人を助けるためにね」と素っ気なく応じた。

それでも運転手は「考えつくのはこんな酷い天気には関わらないってことだが、こんな嵐でもなきゃわざわざお客さんが金を払ってタクシーに乗ることもなかっただろうね。お客さんが探してるのはどんな類の助けなんだい?」と続けた。

「質問の多い運転手だね」と苛立ちを露わにした。ジャケットからはまだ滴がぽたぽたと落ちていた。私は男のタクシー免許証を一瞥した。名はブラーエ、免許番号8K9-99Vとだけわかった。「急いでくれないか?」と私は言った。

「ええ、ええ、きちんとやらせてもらいますよ。わかりました。すぐそこです。」と男は言った。

ようやくだ、邪魔されることなくじっくりと考える機会を得た。

だがそれも脇から迫るヘッドライトを視界に収めるまでのことだった。とてもじっくりと考えることなどできそうにないようだ。

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