P.A. シャポー(P.A. Chapeau)

Originally shared by Itonaga “Siel Dragon” Naohiro

P.A. シャポー(P.A. Chapeau)
2016/10/25 09:05:41
 調査員のマリベル・デル・バジェが何十名ものエージェントの協力を得て今回の文書復元に貢献してくれた。私はこの文書が北カリフォルニアにおけるアコライトとスザンナ・モイヤーとのやりとりを表沙汰にする最後のページではないかと睨んでいる。

 これらの文書が表沙汰にできたのも数多くの諸君のおかげだ。行方がわからなかったスザンナの足取りがわかっただけではなく、スザンナがクルーの運命にどのように係わっていたかがわかったし、私は疑わしく感じてはいるものの二人が「テクトゥルフ」の名で知られるようになってきたものにどのような役割を担っているかもわかった。

P.A. シャポー

#InvestigateIngress

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 何もかもが変化していたし、何もかもが常に変化しているが、そう思えるものは一切ない。小屋をじっと見つめたとしても、その小屋を見ているわけではないのだと悟った...だが、スザンナの瞳はそのような真似をすることはない。自らの脳が形作る小屋を見ていたのだ。だが、実際の小屋は果たしてどのようなものだったのだろうか。

 シェイパーやナジアの仕業なのだろうか。知覚の全てはシェイパーやナジアによってもたらされているものなのだろうか。

 スザンナが実際にアノマラスゾーンへ立ち入るのは初めてのことだったが、イングレス・アノマリーにはそこに似た残滓があった。見たことのない奇妙な事象の目撃や予期せぬ音、いっとき垣間見る非現実の残滓、あるいは現実を垣間見ているのかもしれないが。スザンナにはそれが何処の現実であったのかはわからなかったが、異なるものであった。幾千と広大なイングレス界について語ることで、初めてその実在にたどり着いたのだろう。

 小屋の内は光源定かでなかったが光り輝いていた。それこそが純然たるエキゾチックマターの煌めきであったのだろうか。スザンナの前には中世期の死体解剖を思わせるローランド・ジャービスの躯が横たわるテーブルがあった。その躯が明滅し始めたことでスザンナは身を強張らせた。その内にあるエネルギーを確かに感じ取ることができたのだ。それはスザンナの想像にすぎぬものだったのだろうか。ジャービスはあたかも大聖堂で煌々と輝く白い彫像のようであった。古代の人々はこの事象にヒントを得ていたというのだろうか。遥か遡る時代を生きたセンシティブたちは今スザンナが目にしていると同じ事象を目撃していたというのだろうか。

 次の瞬間、スザンナは目にしたものに心底驚かされた。それは蓮華座の姿勢で佇み、周囲の床を緑色の粒子で染め輝かせるひとりの女性の姿だった。クルーだった!何も映し出さぬその瞳は小さなエメラルドの如く輝いていた。一体クルーの身に何が行われたというのだろうか。一体クルーは何をしているのだろうか。

「クルー...」、スザンナは喘ぐように呟いた。声が聞こえ、瞳の奥に瞬くものがあるように感じた。それが正しい認識であったのだろうか。

 アコライトは言った。「クルーは変遷の途にあるのです。かつては彼女でしたが、別の存在へなりつつあるのです。そしていずれは異なる存在となることでしょう...」

 スザンナは無言だったが、それは重要なことではなかった。刻が何の意味ももたないかであった。応えるために永遠の刻を費やせるかに感じていたのだ。「最終的な変遷はあなた自身に関わることなのですよ、スザンナ。それはあなたの父君に関わることであり、あなたに達成をもたらすことでしょう。それこそあなたが欲していたことではなくて?私たちの誰もが欲していたことではないかしら?」

「私に何を望んでいるのかしら?」スザンナは訊ねた。

「成すべきを行いなさい、ですがクルーを連れて行ってほしいのです。彼女の肉体をですけど。相応しいとき相応しい手段であれば適うことでしょう。」

 奇妙な受け答えではあったが、そのときその小屋にあっては充分であった。

 スザンナの成すべきことは明らかなことだった。

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