Originally shared by GreyWagtail languAGEnt
【Ingressラテン語講座 2】リーミナ
オブシディウスとシュファクスの時空を超えた旅についての文書がこれまでにいくつか公開されていますが、その中に「ポータル」を指しているように思われる「リーミナ」という言葉が出てきます。
Itonagaさんの邦訳では以下の文書が該当します。
https://plus.google.com/+NaohiroItonaga/posts/fQSyc8xLeMY
「シビュラ曰くリーミナより不吉がもたらされるらしく、いつも以上に取り乱した様子であった。」
https://plus.google.com/+NaohiroItonaga/posts/TN6o2xfwUx9
「最近になって、シビュラは二つの導きの声について語ってくれた。声のひとつはリーミナを通じて、もうひとつは向こう側の世界から聞こえてきたのだという。」
https://plus.google.com/+NaohiroItonaga/posts/EbhfqZkRtM2
「枯渇したのです、シールドによって幾つものリーミナが沈黙させられました。その内にあったものを取り去られたのです。」とシビュラが言い、私は理解に達した。
https://plus.google.com/+NaohiroItonaga/posts/6D6nsGimoBS
「あれはシーモンスター...幾多の生命が失われることでしょう。あの者らは邪な目的にリーミナを用いたのです。」
「私たちはさだめに導かれし者、リーミナの囁きに選ばれし者なのです。私たちは再び戻ってくることでしょう。」
https://plus.google.com/+NaohiroItonaga/posts/UucUqApURoT
「奴らは何を造っているのだろうか」と私が訊ねると、シビュラは「リーミナを造っているのですよ。成し遂げた暁には、彼らはその力の恩恵に浴し、偉大なるビジョンを得ることになるでしょう。……」」
「あれこそリーミナに秘められし力に触れた者の証です。あの女性は誇りに思っていることでしょうね。あなた方にとっての戦場で受けた傷のようなもの、あの女性はリーミナに精通していることでしょう。リーミナの一部を刻み込んでいるのです。」
さて、原文では「līmina」と書かれています。これは、実は複数主格の形で、単数主格では「līmen」すなわち「リーメン」となります。したがって、上記の「リーミナ」は特定のポータルではなく、ポータルの集合体、もしくは一般的な概念としてのポータルとして理解すべきだということになります。日本語では無理に区別しませんが、英訳するならa portalではなくthe portalsであるということです。
では、līmenを羅英辞典で引いたものを訳してみましょう。
1) threshold=出入口の上の横木または下の敷居。
1a)ドア、入り口。
1b)競馬のゲート。
2)入り口と出口の両方。
2a)始まり、開始。
2b)終わり、終了。
原義としては出入口の上とか下の、要するに中と外を区別するもの。そこから派生して、出入口→ものごとのはじめや終わりを指す言葉であることがわかります。これは「空間・時間的な境界に位置するもの」ととらえていいでしょう。
現実(今見えているもの)とXMの世界の「境界」に位置するのがポータルであり、あるいはXM(エキゾチックマターは「異界物質」とも訳すことが可能です)に満ちた異界とこの世界の境界にあって双方をつなぐものがポータルだと解釈できます。
柳田国男や小松和彦の著作を多く読んでいる人なら、すぐに理解できるでしょう。塞ノ神・道祖神のように、「こちら側」と「あちら側」を隔てるもの、もしくは「あちら側」と「こちら側」の接点となるもの、それがポータルであるということです。諸星大二郎の妖怪ハンターシリーズなどで、異界へと開いた入り口は、リーメンそのものと言えるでしょう。
そういえば、神社では社殿がポータルになっている場合も多いのですが、それ以上に鳥居がポータルとなっている例が多く見られます。ときには、鳥居だけがポータルで、社殿はそうではない場合もあります。鳥居は不浄の人間界と神域を隔てるものであり、また神々の通られる出入口であることを考えれば、これこそまさにリーメンの中のリーメンというわけです。
ローマではリーミナと呼ばれ、現在はポータルと呼ばれるもの。日本では古来、結界やしめ縄や鳥居や山門や道祖神の姿をとってきたのかもしれません。
(写真は代官山の猿楽神社。猿楽塚はもともと古墳であり、江戸時代に塚の上に神社が祀られました。古来の聖地が時代を超えて新たな聖地として認識されることは、中沢新一のアースダイバーにも説かれているとおりであり、もちろんこの猿楽神社もポータルとなっています)
コメント
コメントを投稿